東雲赴く藤の園にて

覚書やら考察やら日常やら。

ここに居ていいんだ

去る9月10日、MUSICALしゃばけ弐~空のビードロ・畳紙~を観劇して参りました。

以下感想と覚書をつらつらと。(妖怪フジワラスキーによる偏っためっちゃ長いまとまらない感想です)

 

そもそも私は原作小説の10年来の読者でありファンでして。

小学生の頃から読んでいて、妖好きの私を作った大きな原因だと言い切れるくらい大好きな小説、それがしゃばけです。

そしてそんな大好きなしゃばけの中でもとりわけ好きなキャラクター……それが屏風のぞきでした。(ドラマ化したとき、雨上がり決死隊の宮迫さんが演じられたこともありましたね……めちゃくちゃ好きでした)

 

そんな大好きなキャラクターを、これまた細々ではありながらも応援させていただいている大好きな役者さんである藤原祐規さんが演じて下さる。最高すぎて、第一弾キャスト発表時に狂喜乱舞したことを覚えています。

今回ミュージカルになったお話……畳紙は、屏風のぞきが活躍するこれまた大好きなお話です。

塗り重ねた白粉のぶんだけ心も厚く覆われかたくなになってしまった紅白粉屋の娘・お雛の心を解こうと、意地っ張りでへそ曲がり、だけど本当はとっても優しくて(人じゃないけど)人情味あふれる屏風のぞきが健闘する物語。

 

ミュージカルしゃばけになんの心配もいらないことは前作で証明済み。

(と言っても前作でもミュージカルってどうすんだろなと軽く思った程度でほとんど心配なんてしてなかったですけどね。何たって脚本は極上文学でおなじみの神楽澤さん、演出・音楽は最遊記歌劇伝でおなじみの浅井さやかさん、製作安心安定のクリエさんでとどめは愛溢れるプロデューサー吉井さんですよ。最高の面々じゃないですか)

さて私の大好きな畳紙はどう料理されるんだろう?

今回は女性キャストが登場するけれど、ミュージカル経験豊富な浅井さんが連れて来られるキャストさんが素晴らしくないわけがない。

んでもって私事なんですが8月30日が誕生日だったんですよ。

ちょっと過ぎてますが自分への誕生日プレゼントのつもりで楽日マチソワ両方プレミアムシートで取って、もうそれはそれは楽しみにしていたわけで。

敢えて不安を挙げるならば、仁吉と若旦那の不在をどうするのかくらいのもの。

 

して、観劇してどうだったのか。

結論から言うと、今ニコ生タイムシフト観てます。夜行バスで帰ってきたその足でコンビニ行ってウェブマネー買って。追いしゃばけ弐してます。

ロスに耐えきれなかった。

それくらい最高で最高で最高で、なんでこの舞台二時間で終わっちゃうの?って思った。動画みたいに、シークバーを最初に戻して何度でも観られたら良いのにと。

いつまでも観ていたかった。

舞台を観て、こんなに心地の良い涙を流したのは初めてでした。

 

まずもう開演五分くらいで泣きました。

目の前で消えゆく儚い命に必死に呼びかける屏風のぞき。

いやあれずるいやろ。あの演出ずるいやろ。しゃばけ知ってれば知ってるほど辛くなるやつやん。

仁吉と佐助は誰より一太郎に寄り添っていて過保護だけれど、産まれたときから知っているわけじゃないんですよね。

はじめに産まれた一太郎が亡くなり、てんやわんやの挙句反魂香で再び命を得る、その顛末を、昔から長崎屋にいた屏風のぞきはきっと見ていたわけで。

そうして、失う辛さを味わっている。人間はなんて儚く脆い。

幼き頃の一太郎と屏風のぞきの出会いの回想シーンとも繋がりますね。

あのシーンの、小さな一太郎の手がそっと屏風のぞきの手を取り、お饅頭を一緒に食べようと誘うシーンでまた号泣ですよ。冒頭シーン思い出して余計泣ける。

反魂香によって命を取り戻した一太郎に、屏風のぞきは積極的に関わりには行かなかった。一度命の灯が消えるところを目撃している挙句、蘇っても体が弱く寝付いてばかりの一太郎。下手に関わってまた失う辛さを味わうのは嫌だったんじゃないかなぁ……。

でも心配で、結局関わっちゃってるあたり……。

「饅頭は熱が下がってからだ」って台詞の、ぶっきらぼうな優しさよ。一太郎を守るためにやってきたとは言え、表向きは小僧として働く仁吉と佐助はずっと側にいることはできない。寂しい一太郎の隙間を埋めたのは屏風のぞきだったんですよね。

「お雛さんは寂しいだけだろうから。」

この台詞、そのことを自覚している一太郎だから言えるものだったんだろうな。屏風のぞきなら大丈夫だ、自分の寂しさを無くしてくれたのは屏風のぞきなんだからと。屏風のぞきへの信頼の詰まった台詞だったんだなぁ。

 

お雛さんの歌声、震えました。心を揺さぶる歌声ってこういう声のことなんじゃないかしら。美しく繊細で、歌が演技してる。すごい。「助けて欲しいの」の女性陣圧倒的ですね……。重唱って言うんでしょうか。

歌うまい人じゃないと出来ない芸当、さすが浅井三姉妹

他の場面でも、ソプラノ入るだけでこんなに華やかになるものかとびっくりしました。女性キャストとっっっってもよかったです。

お雛さんと屏風のぞきののやり取りもまた可愛いこと……。特に「わからず屋な二人」。

最後の「わからず屋!わからず屋!」を言い合いながらハモるとこ好きすぎて誰か一緒にやって欲しい。楽しそう。

 

紆余曲折あって、お雛さんの悩みは解決。実は紙の喩えは原作にはなくて、もう夢に出てきてくれないのと問うお雛さんに、屏風のぞきはこれからは正三郎さんに相談しなよと最後のアドバイスをして去っていくのですが、原作にない要素をさらりと混ぜ込む脚本家さんの手腕って本当にすごいなと思います。「紙のように」の優しい表情と声に泣かされます。

 閑話休題な妖トリオの日替わり(?)シーンを挟み、話は空のビードロへ。

平野さんて、不安定な演技がほんと上手いですよね……。

なんというか、平野さんは自分の周りの空気すら操って演技してるんじゃないかと思います。帰る場所のない松之助を取り巻く寂しい空気が見えました……。

生の平野さんを観るのは二年前のボーイバンドぶりだったのですが、歌が格段にパワーアップしててびっくりです。

「奉公人ブギ」良いですね……前回の「我ら妖」的な可愛さと、三人のハーモニーの心地よさ!浅井さんの音楽はハモリが絶妙に気持ちよくて好きです……。

今回のミュージカルでは、畳紙では「私の心」、空のビードロでは「遠い空」と「いつか心浮き立つような」 が、基本的なメロディーラインは同じながらも歌詞やメロディ、歌い方を変えることで印象的な使われ方をしているなと思いました。一つの曲を、キャラクターの心情に合わせて変化させていくことで、客側としても心情の変化が分かりやすいですし、軸が定まっているのでまとまった印象を受けました。音楽ってすごい。

あと松之助の歌う「孤独の始末」に、第一弾で一太郎が歌っていた「会いたい人」のメロディが入ってるのが心憎い演出だなあと……!!

井戸に鼠捕り薬を入れようとするシーンは毎回ぞわぞわ鳥肌が立ちます。田宮さんのコーラスすごい……。

火事になる前に辞めていたとはいえ、東屋が焼けてしまったことで完全に天涯孤独の身となった松之助。そんな彼を救ってくれるのは、透き通った青のビードロ

ゆく当ても、食べ物もなく、どうすることもできない松之助は、母親が交わした約束を破ることになると分かっていながらも、ビードロに導かれるように長崎屋へと向かいます。

そんな松之助を暖かく迎えてくれたのは、この世にたった一人血を分けた兄弟であり、松之助を幾度も救ったビードロの持ち主であった一太郎でした。

自分には居場所などないと苦しんでいた松之助は、離れていても、会ったことがなくても、ずっと自分の身を案じてくれていた一太郎のことを知り、ようやく居場所を手に入れます。

泣きじゃくって何も言えない松之助の心情を語る守狐と屏風のぞきの声が良くて……!!明るく、はっきりと高めの声の守狐と、低めで柔らかい屏風のぞきの声の交わりが心地よく暖かくて、更に松之助の涙もあって涙を禁じ得ないシーンでした。

前回の植ちゃん一太郎もすごかったですが今回の平野松之助も泣きの演技のすごいこと、というか二人とも本当に涙流してて……キャスティングの妙ですね。

今回の一太郎は声のみの出演ということでどうなるんだろうと思ってましたが、声のみでも一太郎の存在感はちゃんとあって、まさかの歌、しかも松之助とデュエット……板の上に居なくても、植ちゃんはちゃんと一太郎でした。すごい役者さんだなぁ……。

 

最後の「今日もいい天気」は明るいのに泣かせる曲ですね……!!

ここにいてもいいんだよ、君の居場所はここにあるんだよ、大丈夫。

きっと誰もが心の奥底で欲している言葉。

晴れやかな表情で、しっかり前を向いて歌い上げる松之助とお雛さん。

今度は私も誰かを幸せにしたいと歌うお雛さんを見守る屏風のぞきの表情があんまり優しくて暖かくて、余計にまた泣けること……。

 

私、普段からアニメやら舞台やら観てわりとよく泣くんですよね。

でも大抵は「このキャラの気持ちを思うと……」とか、感情移入して勝手にそのキャラの気持ちを考えてぶわっと来るパターン。泣きそう、と思ってから涙が出る。

ただこのしゃばけ弐では、泣きそうとかそんなことを思う前に後から後から涙が溢れて止められなかった。なんで泣いてるのか自分でもわからなくて、かろうじてわかるのはキャラに感情移入して泣いてるんじゃないなこれ、ってことくらいで。

今ゆっくり考えてみると、あの涙は、心にべったり張り付いた悩みとかしんどいことを洗い流す涙。さっぱりするための涙だったのだろうなと思います。

居場所がないと、自分なんて駄目なんだと思う二人が、自分の居場所を、本当の自分を見つける物語。それが空のビードロと畳紙に共通するもので、二人が抱えていた行き場のない不安は、時代は違えど私たち現代社会に生きる者も抱える問題で。

この舞台は、知らず知らずのうちに自分と重ね合わさるものだったんじゃないか。そう思いました。

 

このミュージカルでしかしゃばけを知らない方にとって、もしかしたらこの物語はすごくきれいごとに見えるかもしれません。

けれど、ぜひシリーズを通して読んでいただきたいんです。

しゃばけは、よくあるほのぼの日常系のお話ではありません。

日常の中で度々起こる事件を解決するだけのお話じゃありません。

しゃばけシリーズには、きちんと「変化」が描かれているんです。

シリーズを通して、一太郎はたくさんの問題に直面します。

たくさんたくさん苦悩します。自分のこと、親友のこと、長崎屋のこと。

いつまでも変わらず、大好きな仲間に囲まれて平穏な日常を送りたいと思いながらも、

現実はそうはいきません。

もしほんの少しの選択を誤ってしまったがゆえに状況がいっぺんに変わってしまったら?平穏な日常が突然形を変えてしまったら?(屏風のぞきが好きだとめちゃくちゃ辛いお話なのですが、ぜひ「ゆんでめて」を読んで欲しい……)

この世に生を受けた以上絶対に直面する変化、節目に、もがき苦しみながら、成長してゆくのです。

しゃばけはそんな「変化」を描いた物語だと、私は思っています。

 

今回も、ミュージカルしゃばけは、観た後に晴れやかでほっこりした気持ちになれる、素敵な舞台でした。

第三弾は猫又小丸のお話ということで……猫又のおしろ、寛朝御坊あたりのキャスティングが気になります。とうとう大阪公演があるということで、何公演あるのかわかりませんが大阪なら全通したいな……などとすでにわくわくしています。 

 

 舞台は終わってしまいましたが、ニコ生タイムシフトはチケット購入が10月末まで、視聴は11月末まで出来ます。

DVDは現在予約受付中、発売は3月21日予定です。第一弾のDVD・CDはクリエタウンにて絶賛発売中です。

自分には居場所がないと感じている人、最近なんだかしんどいなぁと思っている人……どんな人でも、あったかな長崎屋は迎え入れてくれます。ほんの少しでも気になったら、観て下さい。

観終わる頃には、まっさらな紙のように、すっきりすることでしょう。

重たく垂れこめた雲が晴れ、綺麗な空が見えることでしょう。

ビードロのような、青い空が。

 

 

 

……ところで、藤原さんは結局何スキーだったんでしょう。

やっぱり屏風のぞきスキーかなあ。岡村さやかさんが正三郎さんスキーで……とおっしゃったときの不貞腐れたお顔がとってもかわいかったなぁなどと思い出しつつ、長くなりすぎた感想ブログはここでおしまいです。次のお仕事情報早く出ないかなぁ。